Report of the Hyogo Prefectural Institute of Public Health and Envir onm ntal Scien es
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兵庫県立健康環境科学研究センター
食品衛生法の改正(5月 30 日)で新たに導入されたポジティブリスト制
昨年度は、中国産冷凍ほうれん草中のクロロピリホスや 山形県産洋ナシ「ラ・フランス」中の無登録農薬カプタホー ルの残留が大きな問題になりました。これを受けて、本年5 月に食品衛生法が改正され、食品中の残留農薬、動物用 医薬品、食品添加物のすべてにポジティブリスト制が導入 されました。
このポジティブリスト制について、残留農薬を例にして考 えてみます。
1)ポジティブリスト制とは
食品中の残留農薬基準は、平成14年4月時点で229農 薬について設定されていますが、これ以外に輸入食品等 では日本で使用されていない農薬が含まれている場合が あり、基準がないため農薬が検出されても違反として取り扱 うことができませんでした。世界各国でそれぞれの農産物 に基準が設定されている農薬は700種類にのぼります。 700種類の農薬すべてに基準を設定するかどうかは現在 不明ですが、基準が未設定の農薬が食品から検出されれ ば違法とする制度がポジティブリスト制です。この制度では 農畜水産物だけでなく、それらを加工した食品を含めたす べての食品が対象になります。
2)食品の監視が厳しくなります
食品中の残留農薬検査は、国際的に実施されており、そ のモニタリング結果の国際比較を表に示しています。明ら
かにポジティブリスト制を導入している国は違反率が高く なります。違反率が高いことは、その国にとっては、食品の 監視、すなわちリスクマネージメントが非常に厳しくなって いることを示しています。今回のポジティブリスト制の導入 は、これまで以上に食品中の残留農薬の監視を厳しくして いくものです。
3)毒性評価の再調査や分析技術の大幅な改良が必要とさ
れます
700農薬の毒性についての再評価と食品ごとの基準値 の設定など、大変な時間がかかります。毒性評価と摂取量 調査ができた農薬から基準が設定されていきますが、完全 実施には3年かかると考えられています。
この制度では基準設定が準備されている農薬700種だ けでなく、それ以外の農薬も測定せざるを得ないことになり ます。これだけの農薬を1つずつ分析することはほとんど 不可能であり、一斉分析法の開発が不可欠になってきてい ます。健康科学部で開発した方法は、現在242種の農薬の 一斉分析が可能です。
「食の安全」のために、健康科学部では、農産物、畜産 物、加工食品について国産品、輸入食品を含めて、各種の 食品についての食品中残留農薬の検査とモニタリングを充 実させていきます。
(健康科学部 寺西 清)
表 検査した検体数に対する違反率の国際比較
*1)
米国は基準のない農薬が検出された場合に違反となる(ポジティブリスト制) *2)
EUはポジティブリスト制を導入していない国と導入している国があり、違反率に幅があります。 *3)
厚生労働省の統計は検査項目総数(検体数x項目数)としているので低い値になっています。
兵庫県 米国FDA
*1)
EU
*2)
日本(厚生労働省)
*3)
調査年次 (1995-2001年) (2000年) (1996-2001年) (1999年)
違反率 0.4% 2.6% 2−7% 0.02%
健環研リポート
平成15年6月 第4号
《目 次》 第1頁 食品衛生法の改正(5月30日)で新たに導入されたポジティブリスト制
第2頁 研究センターの啓発活動
第3頁 阪神・淡路大震災の復旧時における重金属による大気汚染
健環研リポートNo.4
研究センターの普及啓発活動
当センターは、検査に必要な知識や技術の向上のた めに、各種の研修の実施、あるいは各地で開催される 研修会などへ講師として研究員を派遣しています。ま た学外実習にも協力しています。ここではそれらの活 動の一端をご紹介します。
兵庫県下の健康福祉事務所(保健所)検査室の職員 を対象にした研修では、新任者研修、専門コース別研 修、検査室長研修が定期的に開催され、必要があれば 特定の分野についての研修(特別研修)も実施してい
ます。例えば平成 14 年度の新任者研修では、①行政
事務概論、②疫学概論、③水質概論、④検査が適正に
なされているかをチエックするGLP(食品衛生検査施
設における検査等の業務管理)の概要などの講義や⑤ 花粉検査、⑥牛乳規格検査、⑦飲料水の基本一般項目 検査、⑧食中毒細菌の検査などの実習です。専門コー
ス別研修は、①微生物コース(細菌毒素検査法)、②理
化学Ⅰコース(甘味料の分析法)及び③理化学Ⅱコー ス(水道水及び水道原水に混入した有害化学物質の分 析法)の3コースで実施されました。また検査室長研 修では、①感染症の発生状況について、②国における 食品衛生規制の見直しと兵庫県の「食の安全・安心推 進」施策について、③西ナイルウイルスについて、④
平成14 年度衛生害虫等苦情処理に伴う試験結果につ
いて、⑤アメリカ、ヨーロッパにおけるPCB 廃棄物
処理の現状と兵庫県の対応状況などの講演がなされま
した。特別研修はPCR(遺伝子増幅法)による細菌毒 素であるベロ毒素の検出や飛散花粉の判別について行
われました。これら以外にも地域保健対策のための疫
学研修事業も行っています。
全検査担当職員を対象にした研修(全体研修)や各 検査室のグループが主催するブロック研修などでは研 究員が講師として招へいされています。
県職員以外では海外(主に中東、中南米、アジア地 域)の技術者を対象にした研修も行っています。海外 の技術者に対しては、①東アジア酸性雨モニタリング ネットワーク研修、②環境負荷物質の分析技術及びリ スク評価研修ならびに③閉鎖性海域の水環境管理技術 研修です。これら以外にも専門家として研究員を国外
に派遣しています。これらの活動に対し JICA(国際
協力事業団)から当センターは平成 14 年度国際協力
功労者として表彰されました(本リポートNo.1参照)。
このように当センターは国内のみならず国際的にも 幅広く活動しています。
大気汚染物質測定の研修
また、地域に学ぶ中学生の体験活動週間「トライや る・ウイーク」に活動の場を提供したり、大学生を対 象にした学外実習も行っています。
その他の活動として、セミナーを開催し、外部から の講師による特別講演や研究成果の発表を行っていま
す。また「兵庫県立健康環境科学研究センター年報」、
「健環研リポート」を発行し、業務内容、研究成果な どを報告しています。ホームページでは感染症情報、 花粉情報もお知らせしています。
図 阪神3地点の震災前後におけるS P M,S O2,Mn,Z n濃度比の推移
阪神・淡路大震災の復旧時における重金属による大気汚染
兵庫県では 1974 年以来、浮遊粒子状物質( 大気中
に浮遊する粒径 10μ m以下の粒子状物質)に含まれ
る重金属濃度の継続的モニタリングを南部地域 10
地点で行なっています。本報では、29 年間のモニタ リングによって明らかにされた環境汚染の実態のう ち、阪神・淡路大震災の復旧時における重金属汚染 の解析事例について紹介します。
1995 年 1 月に発生した阪神・淡路大震災による大
気汚染への影響は比較的少なかったといわれていま すが、実際はどうだったのでしょうか。震災前後に おける重金属濃度の解析から、復旧時の重金属によ る大気汚染の一端が明らかになりました。震災前後
の重金属濃度を平年値( 震災前5年間の平均値)と対
応させてみますと、鉄( Fe) 、マンガン( Mn) 及びニッ
ケル( Ni ) では平年値と比べ大きな違いはみられない
のに対して、粒子状物質濃度( SPM) 、亜鉛( Zn) 、鉛( Pb) 及びカドミウム( Cd) では震災直後から3月にかけて 平年値に比べ濃度がかなり増加しました。濃度増加 が震災によるものかどうかを検討するため、月ごと の対平年値をもとめ、震災の影響のない対照地域の 対平年値で標準化した値( 濃度比) で比較を行ないま した。
図は、震災前後における 3 地点の SPM、二酸化硫
黄( SO
2) 、Mn 及び Zn の濃度比を示しています。SO2
の濃度比は震災後に 3 地点とも平年値以下に低下し、
Mn の濃度比の増加は比較的小さかったのに対して、
Zn の濃度比は顕著に増加し、Pb、Cd も同様な結果で
した。このように震災後の 2、3 月に、Zn、Pb、Cd
の濃度比は最高で 60∼100%増加しましたが、これ
は何に起因したのでしょうか。
大気中における測定から、Zn、Pb の平均粒径は Fe、
Mn に比べ小さいことが知られていますので、震災後
には Zn、Pb のような粒径の小さい重金属の濃度が顕
著に増加したことになります。SO
2の濃度比はいずれ
の地点でも低く、化石燃料を使用する固定発生源の 稼動率は震災後、低下したと推測されます。また、
芦屋では一酸化窒素( NO) の濃度比は低く、重金属の
濃度比の増加を移動発生源からの影響と考えること はできません。粒径の小さな重金属成分でより濃度 比の増加がみられたことは、それらが倒壊家屋やビ ルの解体工事に伴う粉じんとして発生したのではな く、燃焼過程を経てヒュームとして発生したことを 示唆しています。震災直後は発生した膨大な廃棄物 の処分が間に合わず、簡易焼却炉による処理に切り 替えられた4月まで、緊急避難的に廃棄物の野焼き が各地で行われました。都市廃棄物焼却炉から排出
される粒子には通常、1∼3%の Zn、Pb や数百 ppm
の Cd が含まれています。こうして廃棄物の野焼きは
かなりの量の Zn、Pb、Cd を排出したと考えられます
ので、2、3 月における Zn、Pb 及び Cd 濃度の顕著な 増加に野焼きが関与したことが示唆されました。
このように、継続的なモニタリングにより 30 年近
いデータを蓄積することで、短期間のデータでは見 えてこないことも、読み取ることが可能になりまし た。 (大気環境部 小林禧樹)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
94.12 2 4 6 8 10 12
濃
度
比
芦屋市 宝塚市 公研
Z n 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
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濃
度
比
芦屋市 宝塚市 公研
S P M
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
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比
芦屋市 宝塚市 公研
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度
比
芦屋 宝塚 神戸
S O 2
健環研リポート No.4
研究センターの動き
IS O14001認証登録を更新
当研究センター(須磨庁舎)は、去る3月3、4日両日にわたって㈱日本環境
認証機構(J AC O)による更新審査を受けました。その後、判定委員会を経て3
月26日当研究センターの環境マネジメントシステム(E MS)が規格に適合し有
効に機能していることが認められ、認証登録が更新されました。これは、当研究
センターが認証登録取得後3年間「全員参加」で E MS の継続的改善と汚染の
予防に取り組んできたことが評価されたものです。
当研究センターはこの3年間、薬品の適正管理・適正使用に努めるとともに、
昼休みの消灯、廃棄物分別の徹底、室温の温度管理、両面コピーの向上など
を通して電気・紙などの省エネ・省資源、廃棄物の削減を推進してきました。ま
た、環境に関する科学的・技術的な調査研究及び試験検査を業務とする当研
究センターの特色を生かし、ホームページや学会・当研究センター発表会など
での発表を通して情報発信に努めてきました。
今後は、3年間の成果である削減された資源及びエネルギー使用量・廃棄
物量の維持管理を行うとともに、当研究センターが行っている、「兵庫県ダイオ
キシン削減プログラムにもとづく各種対策の削減効果の数値的検証及び新た
な施策の提言に関する研究」「河川水質の改善、水量の確保、水辺空間の保
全に向けた面原負荷の削減対策や適切な土地形態の提言に関する研究」「兵
庫県における温室効果ガスの削減対策と県民生活への影響予測に関する研
究」などの環境保全・創造研究を積極的に推し進め、地域の環境問題や地球
環境問題の解決に向けて貢献していきたいと考えています。
最近の研修会
当研究センターが行う研修等については、第 2 ページでも紹介していますが、
IS O14001 の登録証 排水処理装置の審査(3 月 4 日)
最近行った研修及び発表会は以下のとおりです。
研 修 ま た は 発 表 会 名 日時(平成 15 年) 対象者又は参加者
健康福祉事務所検査業務担当者専門研修(メニュー研修) 2 月 13、14 日 9
健康福祉事務所検査業務担当者研修 3 月 6、7 日 3
健康福祉事務所検査室長研修 3 月 14 日 8 名
飲料水健康危機管理に係わる簡易水質分析キットの実施研修 3 月 19 日 18 名
大気汚染研究発表会(環境局大気課と共催) 5 月 21 日 22 名
神戸大学医学部学生 4 年次学外実習 5 月 27∼30 日 7 名
新しいホームページ
当研究センターのホームページは 4 月 1 日から内容が新しくなっています。各部の業務、研究内容を分かりやすく紹介していま す。また当研究センターの年報(第 1 号)などの出版物も見ることができます。下記のアドレスに是非一度アクセスして下さい。
発行 兵庫県立健康環境科学研究センター 担当 企画情報部 TEL (078)511-6740 URL ht t p: / / www. i phes. pr ef . hyogo. j p/
〒652-0032 神戸市兵庫区荒田町2丁目1番29 TEL (078)511-6640 総務課 Fax. (078)531-7080
当研究センターのホームページで、健康や環境に関する情報を入手できます。またこれまでに発行した衛研リポート(No.1~34)と健環研
リポート(No.1~3)を見ることができます。健環研リポート編集委員会では皆様からのご意見、ご感想をお待ちしています。
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